視覚は、黄、青緑、青、紫外が相互に区別されることが証明され、ミツバチは、青空の一角を見るだけで太陽の位置を知ることができる、いわゆる偏光解析能力をもっていることも発見されてる。これらは複眼の機能である。 嗅覚(きゅうかく)は、触角に広く分布する感覚子が受容器となっており、花の匂(にお)いを識別するだけでなく、その匂いで仲間に蜜源植物の種類を伝達する。味覚は、口器と足の跗節(ふせつ)(先端の節)、それに触角にも味覚の受容器があるといわれている。 ダンスによる情報伝達の研究は、フリッシュの40年余にわたる業績として有名であり、生物学的にも画期的なものであった。ミツバチの「ことば」を解析したこの研究業績に対して、1973年ノーベル医学生理学賞が贈られた。 その「ことば」すなわちダンスは、巣箱内の垂直に下がっている巣板の上で行われる。有力な蜜源、花粉源植物から、花蜜や花粉を採集して巣箱に帰ってきた働きバチは、興奮状態で巣板の上を慌ただしく動き回り、ときどき腹部を激しく振動させながらダンスを行う。ダンスには、花が巣箱から100メートル以内にあるとき、距離だけを知らせる「円舞」と、100メートル以上にあるとき、距離と方向を知らせる「尻(しり)振りダンス」の2種類がある。「円舞」は、その名のとおり、円を描きながら不規則にぐるぐる動き回り、すぐ近くに花があることを知らせる。「尻振りダンス」は規則正しく「8(はち)」の字を描き、その中央の直線を動くときに、とくに腹部を激しく振動させる。フリッシュの実験によれば、100メートルのときには15秒間に9~10回、1000メートルになると4~5回、6000メートルのときには2回、と回転数が多いほど近く、少ないほど遠い距離を示している。 次に「8」の字の中央の直線上を動く方向と、重力の反対の方向(真上)とのなす角度が、巣箱と太陽を結ぶ線に対する花の方向を示している。たとえば、ミツバチの動きが真上を向いているときには、太陽の方向に飛んで行けば花があると教えている。